宮崎県日南市の元副市長らが逮捕された事件を巡っては、捜査機関が否認や黙秘する容疑者を長期間勾留することで、自白を強要する「人質司法」の問題が浮かび上がる。事件は本当に官製談合だったのか。
【写真】田中利郎さんが勾留中につけていた被疑者ノート。厳しい取り調べの実態が記されていた
被告人の控訴を棄却する-。昨年11月、福岡高裁宮崎支部の判決に、無罪主張を続けてきた田中利郎被告(68)は深いため息をついた。
「市のためにやってきたことなのに…。こちらの言い分をまったく聞き入れてもらえなかった」
被告は宮崎県日南市の副市長だった2021年、市発注工事で「入札の秘密」に当たる情報を当時の地元建設業協会会長に漏らした上、会長の依頼で特定の業者を指名競争入札から外したとして3度逮捕され、官製談合防止法違反などの罪で起訴された。一審宮崎地裁で懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受け、二審もこの判決を支持。現在、最高裁に上告している。
コメの価格高騰が続く中、安価でのオンライン販売を装って消費者をだます詐欺の被害が佐賀県内で確認されている。インターネットや交流サイト(SNS)上で、コメを市場価格よりも安く販売するとうそを言い、購入希望者から現金をだまし取る手口。物価高に苦しむ県民の心理につけ込む悪質な詐欺として、県警が注意を呼びかけている。
【写真】佐賀県警が配信した注意喚起
県警生活安全企画課によると、今月に入って複数の詐欺被害の届け出があった。いずれの手口も、SNSなどでコメを市場価格の半額程度で販売するという趣旨の内容が発信。購入を希望した人に対し、指定の金融機関の口座に代金を送金するよう指示があった。購入希望者が送金しても、商品は届かなかったという。
被害の拡大を防ごうと、県警は10日、県の防災・防犯アプリ「防災ネットあんあん」で注意喚起のメッセージを配信した。同課の担当者は「『少しでも安くコメを買いたい』という消費者心理を突いた悪質な手口。ネット上での取引では、購入先を吟味して慎重に判断してほしい」と語る。
農林水産省によると、3月31日~4月6日に全国のスーパーで販売されたコメ5キロ当たりの平均価格は4214円だった。値上がりは14週連続で、前年同期の2倍超になっている。
(才木希)
福岡県警は25日、酒気を帯びてバイク通勤したとして道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで任意捜査を受けていた城南署の男性警察官が、不特定多数の女性を盗撮していたと明らかにした。「約5千枚撮影した」と供述しているという。県警は同日付で懲戒免職処分とし、同法違反と県迷惑行為防止条例違反(卑わいな行為)の疑いで書類送検した。起訴を求める厳重処分意見を付けたという。
【写真】福岡県警城南署
処分されたのは同署地域課の男性巡査長(34)。送検容疑は2022年9月11日夕、福岡市西区の歩道や店舗内で、女性2人の後をつけ回して尻や脚などをスマートフォンで盗撮し、今年2月22日午前9時ごろ、同市城南区で、出勤のために酒気を帯びたままオートバイを運転した疑い。
県警によると、出勤後に上司が酒のにおいに気付いた。呼気検査では基準値の5倍近いアルコール分が検出された。その後の捜査でスマートフォンから盗撮画像が見つかった。巡査長は22年9月~23年11月ごろに約5千枚を盗撮したと説明。画像解析の結果、県警は少なくとも150人分を確認したという。
巡査長は「前日から長時間にわたり飲酒し、酒が残っていることは分かっていたが、遅刻しないよう飲酒運転してしまった」「ストレス解消と性的欲求を満たすためだった」などと話しているという。那須重人首席監察官は「職員の指導・教養を徹底し、再発防止に努める」とコメントした。
(高田佳典)
福岡県内の50代の女性占い師が複数の客に架空の投資話を持ちかけ、多額の現金を集めていた疑いがあることが関係者への取材で分かった。
【写真】福岡県警本部
実在する企業や団体の事業名目で投資を促され、現金を渡したと十数人が述べ、複数の投資話で名前を使われた地場の不動産会社は「女性の話は全くの虚偽」と説明。女性は取材に、十数億円を集めたことを認めた上で「詐欺と言われれば詐欺だと思う」と話している。関係者によると、客の一部は県警に被害届を提出しており、県警は女性の関係先を家宅捜索している。
女性は取材に「(客に)架空のことを言ったり、ごまかしたりした。警察の捜査には応じている」と説明。「(金を)返せていない人には申し訳ない。なるべく早く返金したい」と話した。
【ソウル山口卓】韓国南西部の全州地検は24日、文在寅(ムンジェイン)元大統領(72)を特定犯罪加重処罰法上の収賄罪で在宅起訴した。娘の元夫を政界関係者が経営する航空会社に不正に就職させ、給与などを受け取らせたとされる。6月3日の大統領選を控え、文氏の最大野党「共に民主党」は、「検察による政治的弾圧だ」と反発している。
【写真】大統領選への挑戦を表明した野党「共に民主党」の候補の訪問を受けた文在寅元大統領
地検によると、文氏が大統領在任中に、当時与党だった共に民主党の李相稷(イサンジク)元国会議員(62)が経営するタイの航空会社が、娘の元夫を役員待遇で不正に採用した。2018年8月~20年4月ごろまでに、元夫に給与や住居費計約2億1700万ウォン(約2150万円)を支払った。地検はこれを文氏への賄賂と見なした。
李氏は、18年3月に政府系公団の理事長に就任しており、地検は親族を採用する見返りの可能性があるとみている。李氏も贈賄と背任の罪で在宅起訴された。聯合ニュースによると、文氏は元夫が雇われた後、娘への仕送りを中断し、地検は実際の金銭的な利益も得たと判断した。
地検によると、元夫は航空業界での経験はなく、メールの整理など補助的な業務にしか携わっていなかった上、欠勤も目立っていたという。地検は航空会社側も採用の必要性はなかったと指摘し、「(文氏の娘夫婦の)タイ移住を支援するための特別待遇だった」としている。
一方で地検は、娘と元夫を収賄罪の共犯としたが、いずれも起訴猶予とした。
21年に市民団体の刑事告発により捜査を開始。地検は2月以降、文氏の出頭を要請してきたが、文氏は応じていなかった。
【バンコク稲田二郎】ミャンマー中部を震源とする大地震で倒壊したタイ・バンコクのビルを巡り、タイ捜査当局は19日、施工を担った中国国有ゼネコン「中鉄十局」現地法人幹部の中国人の男を逮捕した。タイ人の関係者3人にも逮捕状が出ている。このビルでは強度不足の鉄筋が使用された疑いのほか、エレベーターの構造に欠陥があった恐れもあり、捜査当局は中国人幹部への聴取などで実態を調べていく。
【写真】捜索とがれきの撤去をしているバンコクのビル倒壊現場
建設中だった30階建てビルは3月28日の地震発生直後に倒壊。建設作業員ら47人が死亡した。今も47人の行方が分からず、がれきの撤去など捜索活動が続いている。タイでは外壁の崩落など多くの建物に被害が出たが、倒壊したのはこのビルだけだった。
中国人幹部の逮捕容疑は、外資企業の株式保有率に関する規制に違反した疑い。捜査当局は取り調べの中で、具体的な構造設計や工事監督の状況などを幹部から聴くとみられる。
現地メディアによると、ビルを上下に貫くエレベーターの縦穴の壁が、中国の基準では厚さ60センチとされているが、このビルでは25センチしかなかった。施工は中鉄十局とタイの大手ゼネコン「イタリアン・タイ・デベロップメント」の共同事業体が受注。中国側はタイ側の設計図に基づいてエレベーターを建設したと主張している。
ビルを巡っては中鉄十局の従業員4人が建設資料を持ち出そうと立ち入り禁止の事務所に侵入したとして有罪判決を受けている。