渡島管内福島町でヒグマに襲われた男性が死亡した事故を受け、北海道が出した「ヒグマ警報」の実効性が疑問視されている。道は事案の重大性を踏まえて今回、制度開始後初の警報を出したが、発出時の対応はホームページ(HP)や交流サイト(SNS)などでの周知にとどまる。内容もより軽い「注意報」と同じで、重大被害の続発防止に向けた取り組みに課題が残った形だ。
【動画】ハンターがヒグマ1頭駆除 北海道福島町の住宅街
警報は同町全域が対象で12日から8月11日までの1カ月間で、2022年5月の制度開始以降、初めて出された。SNSなどで示された警報の文書では、ごみ出しルールの順守や早朝・深夜の外出を控えるよう注意を促した。道ヒグマ対策室は「情報はSNSなどで広く周知できている」とアピールするが、その内容は注意報のものとほぼ同じ。「山菜採り等で来訪される方は十分に注意して」などと入山を容認するような文言もあった。
道が22年に警報や注意報の制度を開始したのは、道民や観光客らにクマへの注意を呼びかけるのが目的だ。警報、注意報、注意喚起の3段階に分け、それぞれに発出基準を設けている。警報は、市街地のほか、通学路や観光施設周辺でクマによる人身事故が発生した際に発出。注意報は、農業被害が発生したり市街地付近で出没が頻発した際に、地元市町村の意向を踏まえて出す。注意喚起は、出没が増える季節などに自治体が注意を促したいと判断した際に発出する。
今回の福島町は死亡事故の数日前から市街地でクマの目撃が急増していたが、道と福島町は注意報を出すかどうかの協議を行っていなかった。東京農工大の梶光一名誉教授(野生動物管理学)は「事故後に警報を出しても、対応は後手に回ってしまう。道と市町村で情報共有を徹底し、重大性が住民に伝わる仕組みづくりが必要だ」と話している。