能登半島地震で被災した高齢者施設から石川県内外の「みなし福祉避難所」に移った2131人のうち、約1割に当たる255人が入居先で亡くなったことが11日、県のまとめで分かった。みなし福祉避難所は要介護の高齢者らを受け入れる施設で、ピーク時で約480カ所に開設され、今年3月末に閉鎖された。亡くなった人のうち、一部が災害関連死に当たる可能性もあり、非常時の要支援、要介護者への対策が急務となっている。
みなし福祉避難所は、要介護の避難者の受け入れ先が不足したことを受け、地震直後に県内外の老人ホームなどに開設された。閉鎖されるまでの間、県内の施設に1908人、県外の施設に223人が避難した。
県によると、死者のうち、県内のみなし福祉避難所で亡くなったのは226人で、県外は29人だった。県は死因や災害関連死に当たるかどうかを公表していないが、老衰による自然死のほか、環境の変化による心因性のストレスなどが影響した可能性もあるとみられる。
みなし福祉避難所に避難した高齢者は80〜90代で、持病を持っている人が大半だった。避難した人の1割が亡くなったことに対し、県担当者は「多いか少ないかの評価は現時点では難しい」と話した。
避難した2131人のうち、亡くなった255人以外では、931人(43・7%)が県内外の別の地域に転居。822人(38・6%)が地震発生前に暮らした元の地域に戻り、123人が施設から病院などに移った。
★みなし福祉避難所 能登半島地震の際に特例的に開設された自治体指定ではない、「みなし」の福祉避難所。要介護の被災者を受け入れた県内外の高齢者施設を、災害救助法に基づく特例で避難所と認定し、施設が負担した食費や入居費などを国が災害救助費として給付した。県内では金沢市以南を中心に371カ所、県外では富山、福井、愛知、岐阜、群馬など106カ所が設けられた。
住民によると、能登半島地震以降、施設周辺には立ち入り禁止の看板やバリケードが設けられたが、夜間に若者が不法侵入する騒ぎもあり、警察がパトロールしていたという。
【地図】ユートピア加賀の郷跡地
立ち入りが禁じられていても、観音像を目指して散策したり、記念撮影したりする訪日外国人(インバウンド)客の姿を頻繁に見かけるといい、北陸新幹線加賀温泉駅近くの好立地から、施設の再生を望む声も聞かれる。
地元の作見町区長を務める谷口忠佳さん(53)は「今は廃虚のようになっていて怖い。何らかの形で活用策を考えてほしい」と訴える。付近に住む男性(56)は「大きな地震で観音像が倒壊しないか心配する声を聞くことがある。北陸新幹線が延伸したので、新たなにぎわい施設にならないものか」と話した。
1987年にレジャー施設の一部として建てられた。運営会社の倒産で2000年ごろに営業休止し、所有権が県外の企業に移った。関係者によると、現在は京都市の不動産会社「洛悠(らくゆう)M1」が所有しているという。
所有会社から地元の窓口を依頼されている不動産業「志乃丘商事」(小松市)によると、施設で窃盗騒ぎが起きたのは初めてという。
事件を受け、同社は洛悠と施設内の所有物の管理体制について確認した。志乃丘商事の篠岡沁一郎社長は「これから施設をどうするか話し合っていきたい。割れたガラスがそのままになっており、危険なので入らないでほしい」と話した。
七尾市の交番に火のついた爆竹を投げつけたとして、七尾署は9日、威力業務妨害の疑いで、羽咋市の20代会社員の男と志賀町の10代会社員の男を逮捕したと発表した。
逮捕容疑は5日午後10時20分ごろから6日午前1時45分ごろまでの間、軽自動車の車内から爆竹を3回にわたって七尾市の交番前の敷地や道路に投げ、署員の業務を妨害した疑い。署員や建物に被害はなかった。羽咋市の男は容疑を認め、志賀町の男は一部否認している。
署によると、当時複数の署員が勤務しており、破裂音で犯行に気付いた。防犯カメラの映像などから2人を特定した。
小松市は3日、同僚の男女4人に対し3時間以上にわたって一方的に高圧的な非難・叱責(しっせき)を行うパワハラ行為があったとして、市民病院医療技術部の30代技師を減給10分の1(1カ月)の懲戒処分にしたと発表した。当時、管理監督者だった60代主幹も指導監督不適正で戒告とした。処分は5月20日付。
市によるとパワハラがあったのは2022年2月で、技師は勤務終了間際の時間帯に、同世代の同僚4人を個室に一斉に呼び出し、「給料に見合った仕事をしていない」などと叱責した。以前から4人の勤務姿勢に不満があったという。
市民病院は昨年4月から日本ハラスメント協会(大阪市)に相談業務を委託しており、同6月以降、同僚4人から順次相談があった。技師と同僚は今も同じ職場で働いている。市は個人の特定につながるとして技師の性別、詳細な所属などは明らかにしていない。
宮橋勝栄市長は「遺憾の極みであり、市民の皆さまに深くおわびする」とし、改めて綱紀粛正を徹底するとコメントした。
石川県警は2日、能登半島地震による土砂崩落で1人が行方不明になっている輪島市名舟町の現場で、捜索を再開した。二次災害の恐れがあるとして昨年3月以降、中断していた。
捜索が始まったのは、向(むかい)濵(はま)幸子さん=行方不明時(59)=で、地震直前に自宅前にいたところを近所の人に目撃されているが、地震後に行方が分からなくなっている。
現場に堆積している土砂を、県が約2週間の予定で撤去するのに合わせ、県警も捜索を実施。2日は午前8時ごろ開始し、警察官たちがショベルカーで取り除かれる土砂を注意深く見ていた。県警災害対策課の平野憲一次席は「関係機関と連携して捜索に全力を尽くす」と話した。
活動を見守った近所の江尻浩幸さん(65)は「(行方不明者は)小さい頃から知っている女性。早く見つけてあげてほしい」と沈痛な面持ちで語った。
堆積している土砂は雨で国道に流出する恐れがあるため、梅雨時期を前に近くの漁港の一角に移し、仮置きする。
地震では、他に輪島市町野町の1人が行方不明となっている。